一生全力モラトリアム

Long long time is ago.

春季限定ポコ・ア・ポコ!


春季限定ポコ・ア・ポコ

春季限定ポコ・ア・ポコ

人生はね、ポコ・ア・ポコ(少しずつ)なんだよ。
部活で青春、かっけー!

ALcot ハニカム 『春季限定ポコ・ア・ポコ!』 応援中!
ぬおお。流石、Alcotハニカム文庫面白い。
ストーリーとしては天才チェロ少年が、音楽特待生を辞めさせられるかもしれないからみんなでカルテットを開こう!ってどっかで聞いたような、似たような話。

ウチが卒業する日に、あんたは最高の演奏をしてくれるんやろ?!せやろ!?

そうなんです。
「春季限定」なのは、第二音楽部創設者にして卒業生で理事長の娘、真奈先輩の卒業式だからでもあるからです。
この春、今じゃないと出来ないというのも重要だよね。
才能のある残念系バイオリン担当桜、一年生でただ一人の特待生の駄妹藍、第二音楽部創設者にして卒業生で理事長の娘、真奈先輩、「天才児」の姉を持っていた「努力家の凡人」、夏海、そして音楽プレイヤーの中でしかもう聞くことのできない「天才」である夏海姉、春花とキャラクターはどのキャラも魅力いっぱい過ぎです。
共通ルートの春花音源が無くなり、ピアノ四重奏「はるかかなた」が弾けない時にサッと立ち上がりピアノを華麗に弾く夏海のシーンは鳥肌が立ちました。

四人全員の意識が、瞬時に重なった。
不意打ちのようにピアノが叫ぶ
それに続いて、桜のバイオリンが音を重ねる
すぐさまピアノが走る、それをバイオリンが追う。
駆け上がる、飛び跳ねる。
躍動的かつ繊細に。
クレッシェンドはこうやるんだと言わんばかりにピアノがほほ笑んだ。
一瞬の間。桜がそれを優しく埋めて、藍も時間差で同じメロディーを紡ぐ。
俺のチェロがたなびくように、音をひきつぐ。
そしてまた、夏海のピアノが声を上げる―(続く)

なんというテンポのいい文章なんだろう、まるでカルテットを見ているようなイメージ。
「音楽」という人間の感性に響くものをとてもうまく描写してる。
まるでプレイヤーが音楽を奏でていて、尚且つ第一音楽部部員として演奏している彼らを見て、聞いている気分になりました。
シナリオは、過去に囚われたままの彼方と桜、天才である姉の「コピー」である夏海、新しい家族の藍。どのヒロインも魅力的過ぎ。
せっかくの「音楽ゲー」なんだからもうちょっとピアノ系の音楽とかしっとりした感じの曲を利用してほしかったかな。
あ、「はるかかなた」や「春花彼方」、「Aliare」、「とけないパズル」とかすごい良い。
真菜先輩が攻略したかったです…。FDが出るならば、「もしも春花が生きてたならば」を是非やってほしい。
でもミドルプライスにしては上出来過ぎです。せせなゆうさんの次作が抜きゲーじゃなかったら買うのに…。
お気に入りは悠木春花…って駄目ですか。ナツミンも良い子なんだけど“後押し”という意味合いでは春花さんのスペックが半端無いです。

ダウナー系ギャグキャラで藤咲うささんということもあって、キッキング★ホースラプソディの出穂さんが脳内にちらちらしたり。
桜に関しては「はるかかなた」の春花音源を持ってるぐらいに亡き春花の影を追いかけている気がして。

酷いよ、さよならも言えなかったよ…
彼方なんか友達じゃない!

一番桜と彼方が「春花の死」を引きずっている気がするんですよね。そりゃ当然だよな…。
彼方がバイトをしていたのも「春花の死」と向き合えなかったから埋めるようにアルバイトをして音楽から逃避していた、という部分を明かされる感じです。
カラオケのシーンで真菜先輩がキッキン歌ったり駄妹がClover Heart'sを歌ったりなんかすごいにやにやしましたねw
後輩から妨害を受けて、それをどう解決していくか…がちょっと外道とまではいかないけどご都合主義っぽいなぁ。
バイト先で絡まれる→主人公が庇う→ピアノの弦を切られる→しかし桜は隠しカメラで動画を撮っていた!
けど。
実際にやったシーンが残ってないから動画サイトで音楽勝負だ!
っていうのもわからなくはないんです。
アニソンで勝負して大勝かー…ちょっと納得いかないかも。特に桜も「天才」少女の設定な訳ですし。
後、友達のいなかった桜が春花と出会い友達になって助けてもらえたけれど春花の「脳腫瘍」に気付かずにいて春花を助けられなかった、と泣くシーンと、
「音楽とちゃんと向き合いだしてから」の桜は良かったですね。

私たちはカルテットなんだから!

バイオリンが弾けなくなって、ちゃんと音楽と向き合おうとしていたのに出来ないもどかしさ。
真面目にやっていなかったから音楽の神様に見捨てられたのかと思っていたけれど、亡き親友の為に弾いていたと思っていたけれど。
春花の死によって、傷つけあい、傷つきあいぎくしゃくした友人関係だったものが亡き友人のはじめて作曲した「ゆうじんのうた」で再生していくのはとても良かった。
音楽は一人でやるものじゃないんですよね…。ましてやカルテットになれば。一人欠けてしまったら「カルテット」じゃない。
音と音で結びあう関係から友達になるっていうのも良いスタンス。
でも、もう元々音と音との関係とかカルテットだけの関係じゃなかったと思いますけどね。
結構ご都合主義な部分も目立ちますし、彼方と恋仲になる描写があまり無かったのですが。

  • 駄妹藍\(>ワ<)/

Alcotは「兄は妹で童貞棄てるもの」だとか「お兄ちゃんスケベしようや…」に「お兄ちゃんにデレデレです」っとかホント妹好きなんだなぁと思う訳ですよw
桐谷華さんの駄妹ボイスもたまらなかったですね。たまらん。
話としては野々宮親子の問題っていう感じですね…。
敦良い奴だなあ…。

家族が増えた日にただ一人の家族を失って一人犠牲になったのだ

はじめて出会った時から一番にはなれないけどデレデレな妹だったのか。
お兄ちゃん呼びから「彼方」さん呼びになるのが良いなあ。
双子の妹がいるとはまた超展開だなぁ。
死別したんじゃなかったんだっけ?自分が読み間違え?
とりあえず彼方の母はちゃんと生きてる、っていうのがわかっただけでも。

妹を心配しない兄なんかいないんだ

ナイスシスコン!
結果的に血が繋がろうと繋がらないだろうと家族は家族、って話でしたね。
金策も彼方母の為だったのか。

形はどうあれ、家族は家族だ

うーんこれも結構ご都合主義だなあ。特に。
それだけ野々宮父が世界的なチェリストなら金策しなくてもコンサート開けばいいんじゃあ?とか思ってしまうんですが、
確かに音楽を続けるには莫大なお金が必要と言いますし、金策って言うのも実はコンサートなんじゃないかなと思ってしまいます。
これはライターさんの描写の違いからかなと。

  • 夏海

言えなかったことを言うよ。
声も同じ、笑い方も同じ、優しいところも同じ。
混乱する。
そんなはずは無いと分かっているけれど。

夏海が正式に加入するところからですね。
桜もぶっちぎりで良かったとか言ってるけど、実際は春花に頼りっぱなしだからじつはそうと言えないのにねー。
しかし、夏海も嫉妬というかあきれるわけですよね。
分かるなぁー音楽って才能の部分もあるから、歌うように弾く奴の方が上手いって言うの。
また、辛いなあと思う訳で。今でも彼方は春花を思ってて、夏海は彼方が好きで、春花はもういない。
どこぞの幽霊ゲームを思い出すなぁ。彼方が携帯アドレスの名前を変えられない気持ちもわかる。
桜の応援とか、夏海のひたむきな10年がかりの初恋とかでやっとくっついたのはニヤニヤ。
駄妹が鬼妹になったのには笑いました。姑化してるよ!!超亭主関白だよ!
桜こそ春花に執着してるんじゃないかなぁと思ってしまった。
タッチ、崩し方からやってもそれはただの「春花のコピー」であって、「夏海の音」じゃないというのが苦しいね。
でもそのオチがちゃんとあって良かったwそういうことだったのかーと納得。
なんだかんだで第二音楽部、青春してるよねー。
はじめて「天才」の野々宮彼方の壁にぶつかったって言う感じ。
真奈先輩、藍、桜…どの子の気持ちも「音楽」に対して本当に真摯で実直だなぁと。
それが彼方の特待生枠の為なのか、それとも…とも考えられますね。
夏海はどうも自分を「安売り」しているような気にしてならない。だから良いんですけど。
絶対的な越えられない姉がいるからこそなのかもしれないですが。

あんたはあたしが見込んだ奏者なんだよ!
この程度の音で満足してもらっちゃ困るんだよ!
いいか、惰性で弾くなよ!
毎日、同じ部室で、同じメンバーで練習したって、ホントは全部違うんだよ!
同じ演奏は二度できないように同じ瞬間は二度と来ない!
瞬間、瞬間をかみしめろ!
過去にとらわれず、未来におそれず、今を必死に生きて、感じて、それをあんたの音に乗せてみろ
明日、いい音待ってる!

ホントに「また明日」のレベルで言うんだなぁ…。だからこそ春花の事が彼方は好きだったんだろうと思う魅力的なヒロインだ。
お陰で彼方が未来に向かって歩き出したような気がするんですよ。
結局夏海も春花の過去の音に囚われてて、新しい自分を模索していても見つけられなかったけれど、一人じゃなかったって言うのが大きいですね。
最後の“いたかもしれない”春花の言葉が素晴らしい。

私の荷物半分、背負ってくれる?
身軽過ぎて天国行けるさー私のかなわなかった思いを全部背負って生きてくれるんだ

友達として、と濁していたけれど本当は恋愛対象だったんじゃないかなぁ。
春花の一番の恋人は半分はピアノだったって解釈もできますし、多分夏海の思いを知っているからこそ「友達」という居場所のいい場所に逃げていたのかもしれないし。
でも姉妹揃って願うことは「彼方に音楽を続けさせる」ということだった訳ですからその意味もあって。
やっと春花として「成仏」、彼方の春花への気持ちの卒業、夏海の春花へのコンプレックスの解消ということも有ったんじゃないかなとか思います。

早くに天国に来んな、ゆっくりでいいよ

"little by little"と形容しても良いしタイトルのつけ方、"poco a poco"としても良いですね。